人民解放軍海軍主要装備①

原子力弾道ミサイル潜水艦「晋」型／094・094A・094B型

開発経緯他
　中国人民解放軍海軍は１９５８年からいきなり戦略型原子力潜水艦（ＳＳＢＮ）の開発を始め、１９７４年、フランスの協力を得て０９１型（漢級※）原子力潜水艦を就役させました。これをもとに１９８３年、０９２型（夏級）戦略型原子力潜水艦（水中排水量７，０００ｔ／すでに全艦退役）を就役させます。０９２型は２５０〜５００キロトンはある核弾頭を搭載できる弾道ミサイルＪＬ−１（巨浪１）を１２基搭載し、最大射程は２，５００ｋｍでした。
　０９２型の次の戦略型原子力潜水艦が０９４型（晋級）です。０９４型の開発は０９３型（商級）攻撃型原子力潜水艦をもとにしています。１番艦の建造は２００１年に開始され、２００７年に完成しました。弾道ミサイル搭載艦として戦力化したのが２０１４年です。セイル部分の後方区画を大きく張り出して上下のスペースを拡張し、約３０ｍ船体を延伸して弾道ミサイル用ＶＬＳを設置しています。搭載する弾道ミサイルはＪＬ−１に代わる、１，０００キロトンの核弾頭搭載可能なＪＬ−２（巨浪２）を１２基搭載します。
※漢級、夏級、晋級などはＮＡＴＯのコードネームです。ＮＡＴＯは敵国兵器に便宜上、独自のコードネームをつけ、中国の軍艦に対して漢字１文字で識別しています。中国の軍艦は本来、英文字で艦型を表記しており、中国国内で「〜級」の呼称はありません。
各種
　晋級は現在６番艦まで就役していますが、１、２番艦が原型の０９４型、３〜５番艦が０９４Ａ型、６番艦が０９４Ｂ型といわれています。０９４型原型の搭載ＳＬＢＭはＪＬ−２で射程６，０００ｋｍとされていますが、０９４Ａ／Ｂ型は射程８，０００ｋｍに延伸したＪＬ−２Ａを搭載するとされています。初期には水中放射雑音の問題があり、３番艦以降０９４Ａ型から騒音低減措置が図られ、さらに０９４Ｂ型に関してはセイルの形状などを変更して水中航走の雑音低減がなされているとされます。

潜水艦発射弾道ミサイル（ＳＬＢＭ）　ＪＬ−２
　中国海軍にとって実用化されているなかでは最新のＳＬＢＭになります。
　開発は１９８０年代から開始されました。陸上発射型ＤＦ−３１をベースに開発が進められ固体燃料による三段ロケット推進、核弾頭（２５０〜１，０００キロトン）１基またはＭＩＲＶ（個別誘導弾頭）（９０キロトン）３〜４基が装着可能です。誘導方式は慣性誘導と天測、衛星航法を組み合わせていると考えられ、最大射距離７，２００ｋｍ（８，０００ｋｍともいわる）、弾着精度ＣＥＰ半径は１５０〜３００ｍとされています。ＪＬ−２は２０００年代になって実用化の目途が付き、２００１年または２００２年から発射試験が開始され、テストが重ねられましたが、結果はあまり芳しく無いようで、２０１３年にようやく運用可能と判断されたとされています。
抑止力
　晋級０９４型は建造所が渤海造船所で既就役艦６艦の拠点は海南島にある亜龍湾基地です。本土を遠く離れることなく、南シナ海や渤海に配置運用されると考えられ、ＪＬ−２の運用に際しては米本土に到達しません。米本土特に東海岸をＪＬ−２で攻撃しようとすると中部太平洋まで進出することが必要です。しかし、０９４／０９４Ａ型は静粛性に劣るとされていて、アメリカ他同盟国を含む対潜能力を考えると太平洋での行動は困難です。上記のことから”ＳＳＢＮ”晋級０９４はアメリカに対する核抑止力としては不十分です。ただ、南シナ海や渤海周辺の運用でもＪＬ−２はハワイやグアム、そして当然日本も射程内に収めることになります。


　
　
　

長征０９　Changzheng 09 　406 ２００７年３月就役　南海艦隊
長征１０　Changzheng 10 　410 ２０１０年就役　　 南海艦隊
長征１１　Changzheng 11 　411 ２０１２年就役 　　 南海艦隊
長征１２ Changzheng 12 　412 ２０１５年就役　　　南海艦隊　
長征１７ Changzheng 17 420 ２０２０年４月就役　南海艦隊
長征１８ Changzheng 18 421 ２０２１年４月就役 南海艦隊

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