空母 山東/002型 SHANDONG
導入建造経緯
中国海軍は2010年代から著しく発展する経済と莫大な資金を背景に、空母の建造に着手します。2012年9月に就役した中国海軍初の空母001型「遼寧」はソ連製の未完成STOBAR式(短距離発艦拘束着艦:Short Take Off But Arrested Recovery)空母ワリヤーグを改造再生した艦船で、002型「山東」は、遼寧の改良発展型として建造した中国海軍初の国産空母です。初の空母遼寧が就役した翌年の2013年11月に早くも大連の造船所で002型は起工されました。002型は遼寧に酷似した拡大型、発展型であったことから建造〜就役までスムーズに移行したようです。
搭載、主機その他
空母山東/002型の大きさは、満載6.7万トン(基準5.6万トン)、全長315m、幅75.5mで、遼寧に比べて一回りほど大きくなっています。STOBAR式艦首に設けたスキージャンプ台は勾配角12度で遼寧のジャンプ台より2度小さくなっています。飛行甲板が遼寧より大きく離陸距離が長くなるためと考えられます。飛行甲板の右舷側中央に設けたアイランドは艦橋が二層になっています。上が航海用、下が司令部になっています。アイランドの四面にアンテナ固定型の国産346A型フェーズド・アレイ・レーダーを装備しています。エレベーターは二基です。最大で36機のJ−15艦上戦闘機を搭載できますが、空母山東の標準搭載の航空機の内訳編成はJ−15艦上戦闘機が32機、艦載ヘリが12機(Z−9が2機、Z−18が10機)の計約44機です。
自衛用火器は近接防空用の30mm CIWS(近接防御火器システム)(1130型)が3基、個艦防空用のHHQ−10近距離対空ミサイル18連想発射機FL3000Lが3基搭載です。
主機が蒸気タービン4基(ボイラー8缶:20万馬力)の4軸推進です。31ノットの高速航行が可能で航続距離は18ノットの巡航で1.6万km程、29ノットの高速航行で7,500kmの航行が可能とされています。



Z−9哨戒ヘリ x2機搭載

「山東」空母戦闘群の構成と運用能力の一般的評価等
山東空母戦闘群の編成は、055型ミサイル駆逐艦が1〜2隻、052D型ミサイル駆逐艦1〜2隻、052C型ミサイル駆逐艦1〜2隻、054A型フリゲート艦1〜2隻、901型総合補給艦1隻の構成パターンが多く、093型攻撃原潜1〜2隻の随伴が想定されます。
中国空母戦闘群の運用方針には不明点が多いようです。空母が有用な場面として海洋進出を図る中国に於いてはシーレーン防衛、海上武力紛争におけるエスカレーション管理のツールといったところが想起されます。しかし、遠洋に於いて中国は空母の前方展開拠点が未整備なこと、東シナ海・南シナ海・西太平洋といった近海に於いては周辺国の潜水艦配備が進んでいることで作戦上空母の脆弱性も想定されるため、中国空母は国力の象徴としての意義を除けば活躍の場はあまりないと考えられます。
002型空母「山東」搭載の艦上戦闘機J−15はロシア製艦上戦闘機SU−33ベースとした機体ですが、多様な任務をこなすことができるよう大幅な改良が施されSU−33とは全く異なった内容の中味となっています。J−15は空対空戦闘のみならず空対地・空対艦、さらには限定的ながら敵防空網制圧(SEAD)もおこなえる優れたマルチロールファイターです。しかし空母「山東」(001型空母「遼寧」とも)はJ−15の性能を十分に活かすことができないとされます。艦載機の発艦が艦首部分に設けたスキージャンプ式の勾配によって行われるため、艦載機の発艦重量に大きな制約を受けるからです。
兵器搭載能力が本来8トンあるところ、6.5トンに減らしての出撃を強いられるようです。(もしくは燃料を減らす。)J−15の特長である多彩な兵装を搭載することができなくなり、航続距離にも影響します。戦闘行動の中で、対地・対艦攻撃は空母戦闘群を構成する駆逐艦等に依拠する割合が大きくなるようです。また「山東」のようなSTOBAR型空母のスキージャンプ甲板から固定翼の早期警戒機の発艦・運用は難しく、現状回転翼型早期警戒機の運用(Z−9哨戒ヘリ)を採用しているため、捜索能力・速力・航続距離の点から高度な早期警戒が実現できていません。
2022年6月に進水した003型空母「福建」に於いては艦船の大型化による搭載機数の増加、電磁カタパルトの採用で艦載機の発艦重量の問題が解決されると見込まれ、その動向が注目されるところです。







山東 Shandong 2019年12月就役 南海艦隊
Data | |
満載排水量 | 67,000t |
基準排水量 | 56,000t |
全長 | 315m |
水線長 | 270m |
幅 | 38m/飛行甲板最大幅75.5m |
吃水 | 10.5m |
主機 | 蒸気タービン4機、4軸 |
出力 | 200,000馬力 |
速力 | 30ノット |
航続距離 | 8,500浬/18ノット、4,050浬/29ノット |
標準搭載機 | CTOL機36機程度 |
乗員 | 2,500名 |