戦闘爆撃型の開発実験機
超音速旅客機向けの研究目的
約半世紀に及ぶ運用の間でF‐16戦闘機には夥しい数の派生型が存在しましたが、F‐16XLは外形上、最も特徴的な派生型と言えるでしょう。
超音速巡航・機動性試作機”SCAMP(Supersonic Cruise and Maneuver Prototype or Supersonic Cruise and Maneuvering Program)”としてゼネラル・ダイナミクスで開発され、1977年に始まったこの研究は元々超音速旅客機向けの主翼技術調査目的ともされます。
F‐16XLは通常のF‐16の主翼よりも2倍以上の面積を持つ”クランクドアロー”翼と呼ばれる変形デルタ翼が大きな特徴です。この形状は1950年代に誕生したサーブ・ドラケンが開拓したダブルデルタ翼の翻案と言っていいかもしれません。”ダブルデルタ”は”ピュアデルタ”と比較して離着陸性能や機動性の改善を齎すとされます。

試験機の評価
F‐16XLは初号機(72−0749)が1982年7月3日、2号機(75−0747)が同年10月29日に初飛行しました。
通常のF−16より胴体は延長されていて、エアインテークも長くなり、後部胴体下面のベントラルフィンも廃止されています。主翼面積も2倍以上の58.0m²になり搭載燃料は82%の増加(主翼に内蔵の燃料タンクによる)、兵装搭載箇所は27箇所になるという結果をもたらしました。主翼は大型化に伴い重量削減の観点から炭素繊維複合素材が採用されています。最終的には最大揚抗比は超音速域で25%、亜音速域で11%の改善、。航続距離も40%長くなっています。

複合任務戦闘機(DRF)計画でF−15Eに敗れる
1980年代半ばアメリカ空軍の戦闘爆撃機F−111アードヴァーグの後継機について複合任務戦闘機(DRF)計画が検討され、ゼネラル・ダイナミクスはF‐16XLを提案し、後継機の座を改修型F−15B(F‐15E”ストライクイーグル”)と競うことになりました。
多くの関係者の間ではDRFに於いての総合的性能についてはF‐16XLがF‐15Eより上回っていると考えられていました。しかし1984年2月、DRFの後継機の座を勝ち取ったのはF−15Eでした。
1988年末にはF−16XLにNASAに2機とも引き渡され、各種の研究・調査に用いられて1999年に作業が終了となりました。
これらの経緯と前後して1980年代に日本の航空自衛隊ではF‐1支援戦闘機の後継機について、次期支援戦闘機(FS‐X)計画が進行していましたが、ゼネラル・ダイナミクスはFS‐XのベースとしてF‐16XLを提案の一つに挙げていました。結局は通常型のF‐16がベースとなりF‐2の開発・運用となりましたが、このF‐16XLベースの自衛隊戦闘機も誕生の可能性がありました。

