DF−31(Dong Feng(東風)−31/CSS-10)大陸間弾道弾
1960年代に本格化された中国の核開発はDF−5・ICBM(大陸間弾道弾)が1981年から運用開始されました。DF−5は液体燃料方式で、硬化サイロ運用の即応体制、核攻撃を受けた際の即報復能力を念頭に毛沢東の最小限核抑止力に基づき開発されました。
液体燃料方式、サイロによる運用のDF−5に対して、TEL(移動式発射装置)搭載運用でき、即応性に優る固体燃料方式のICBMの開発が進められ、中国でこの種の戦力化された最初のICBMがDF−31になります。
中国の国営ロケット技術研究院(CALT)は1985年1月にDF−31とその潜水艦発射型であるJL−2の開発を開始しました。1990年代半ばから後半の配備が計画されていましたが、誘導システムに時間を要し、運用開始は2006年となりました。
各型能力・運用等
当初のDF−31(CSS−10 Mod1)は2006年からの配備開始とされていて、3段式固体燃料推進であり、射程が7,000〜8,000kmということからアメリカ西海岸を射程内にしていました。ミサイルの全長約15m、直径2m、発射重量は42,000kgで1,050〜1,750kgの単一核弾頭を搭載します。命中精度はCEP(半数必中半径)で150〜300mとされます。
4軸トラクター4軸トレーラー(HY4301)にミサイル発射筒(キャニスター)が1基搭載され、発射はコールドローンチ方式です。

2007年には中国人民解放軍は改良型のDF−31A(CSS−10 Mod2)と呼称されるDF−31の改良型を導入しました。DF−31Aは1999年に最初の試験を行われ、射程が約11,000kmに延長されました。全長は約14m、直径は約2mです。MIRV(複数個別誘導再突入体)方式により3発から5発の核弾頭を投射可能にしています。
2017年にはDF−31Aの派生型でランチャーをアップグレードして運用展開能力、反撃への生存性が向上したDF−31AGが公開されました。それまでのDF−31各型は移動発射機として、上述の4軸トラクター4軸トレーラーTELからの運用でそのオフロード能力が劣っており、展開可能な場所は限定されていました。旧ソ連の中距離弾道ミサイル(IRBM)SS−20の移動発射機に使用されていた車両を参考に、新型の移動発射機HY4310が開発されました。HY4310は8軸装輪式TELでより高いオフロード能力を有し、これによりDF−31AGは広範な場所に展開が可能になり、反撃に対する脆弱性も軽減され、生存性が高まる事になりました。

2020年時点でDF−31は陝西省の1旅団に合計6基、DF−31Aは青海省、雲南省、河南省の3旅団で合計36基、DF−31AGは蘭州省、湖南省、河南省の3旅団で合計36基の発射機を保有すると見られています。

Data | DF−31(東風−31),CSS-10 |
クラス | ICBM大陸間弾道弾ミサイル |
プラットホーム | 道路機動 |
長さ | 14〜15m |
直径 | 2.0m |
打ち上げ重量 | 42,000kg |
ペイロード | 1,050〜1,750kg |
弾頭 | 単一弾頭、MIRV(最大5発弾頭) |
推進 | 3段式固体燃料 |
射程 | 7,000〜11,000km |