轟炸6/Hongzhaji6/H−6爆撃機

1950年代の旧ソ連の旧式機
 中国は旧ソ連が開発したツポレフTu−16”バジャー”戦略爆撃機の供与とライセンス生産について旧ソ連との間で1956年初めに合意しました。1959年2月に機体の引き渡しが行われます。2機が旧ソ連から引き渡され、そのうちの1機ノックダウン生産キットを受け取り後生産(もう1機は分解された機体見本とされる)、同年9月に初飛行後、同年12月に人民解放軍空軍に引き渡しされました。同年ライセンス生産の合意にも至りましたが、その後の中ソ対立の影響もありH−6(轟炸6)の量産型の初飛行は1966年でかなりの時間を要することになりました。
 Tu−16”バジャー”は胴体の主翼取付部にエンジンを装備した双発機で、ミクリンAM−3M−500ターボジェットエンジンも中国名称”過噴8(WP−8A)”で同じくライセンス生産しました。胴体中央部に爆弾倉があり、最大9000kgの搭載能力があります。
 H−6は当初、核兵器投下型であるH−6Aから生産が進み、1973年に60号機が完成した時点で製造作業が一旦停止されたと見られていましたが、各種改良研究が継続され、空中発射型の弾道ミサイル、超音速巡航ミサイルの運用能力の獲得する等、現在貴重な打撃戦力として230機以上が運用、生産中となっています。 

Tu−16”バジャー”をライセンス生産したH−6A(轟炸6A)

各種
 H−6はこれまで多くのタイプが開発されてきましたが、主なものを列挙します。
・H−6A:H−6の初期量産/核兵器投下可能型です。1969年2月からの部隊装備開始とされ、1980年までに7回の核実験に使用されたとされています。
・H−6D:空対艦ミサイル搭載の海洋打撃型です。C−601空対艦ミサイルを主翼下に1発ずつ計2発搭載できます。全周360度監視レーダー”HL6D(245型)コバルト”を搭載し、機種下のレドームが大型化されているのが外観上の特徴です。
・B−6D:H−6Dの輸出型
・H−6F:少数のH−6及びその改良改修型の航法装置を全地球測位システムとしたものです。精密誘導兵器の運用能力が追加されて、海洋爆撃機として使用されます。
・H−6G:H−6を地上発射巡航ミサイルの目標情報を提供するために改造したタイプです。兵装類の搭載能力はなくされています。後述のH−6N爆撃機等からの空中発射弾道ミサイル、巡航ミサイル運用に関しても目標情報を提供するとされています。

H−6G


・H−6U:H−6を改造し、空軍向けに空中給油母機としたものです。
・H−6DU:H−6を改造し、海軍向けに空中給油母機としたものです。

2機の殲撃8に空中給油を行うH−6の空中給油母機型H−6D/6DU

・H−6H:胴体内爆弾倉が廃止、防御用装備も外され、主翼下に巡航ミサイル”YJ−85(C−805)(射程350km)”を左右に1発ずつ計2発搭載します。
・H−6M:H−6Hと同じく巡航ミサイル運用型ですが主翼したの搭載ステーションが左右2発ずつ計4発に増やされました。生産数は少数に留まっているようです。

空中発射弾道ミサイル及び超音速巡航ミサイル等の運用能力
H−6K:H−6AからH−6Mまでの各種についてはTu−16搭載のミクリンAM3M500のライセンス生産型、過噴8(WP−8A)が改良を施されながら使用されていましたが、H−6”轟炸6”シリーズの最新型の基本タイプともいえる”H−6K”以降ロシアから導入したソロビエフD−30KP−2ターボファン・エンジンに変更されています。それに伴い空気取り入れ口の大型化も施されています。この変更で過噴8から推力が30%増加(93.2kN→117.2kN)、燃費効率も20%程向上しました。これによりペイロード(兵装類最大搭載量)は9000kg→12000kgに増加、主翼下の兵器搭載ステーションも左右3発ずつ計6発に増やされ、航続距離・戦闘行動半径(1,800km→2,200km)の延伸も達成されました。
 H−6Kは開発開始が2003年、初飛行は2007年1月です。
 元々旧式機のH−6”轟炸6”シリーズですが、このH−6K型の登場で対外関係の評価が一変したと言えます。
 特記する搭載兵器は以下です。前型H−6Mから運用したとも伝えられる”ソ連版トマホークKh−55”を参考にしたとされるCJ−10巡航ミサイル(射程1,500km程)がまず挙げられます。長射程の射程1500km〜2000kmとされる巡航ミサイルKD−20、最大速度マッハ4/最大射程400kmとされる超音速巡航ミサイルYJ−12の運用能力も付与されています。更に2022年に完成したとみられる新型の超音速巡航ミサイルDF−100(もしくはCJ−100)は射程3000kmです。

主翼内弦にCJ−10巡航ミサイル、外弦側にKD−63巡航ミサイルを搭載のH−6K
主翼下に搭載された超音速巡航ミサイルYJ−12

H−6J:H−6Kの人民解放軍海軍向けです。
H−6N:H−6”轟炸6”爆撃機の最新型です。胴体下の爆弾倉を撤廃して空中発射弾道ミサイル(ALBM)を搭載するために凹みが設けられました。この設けられたステーションにDF−21対艦弾道弾を空中発射型に改造したYJ−21”米軍呼称CH−AS−X−13”(最大射程3000kmともいわれる)を運用するとされています。主翼下のパイロンは左右3ヶ所ずつ計6ヶ所です。
 またH−6Nは同機のセンサーとしての役割を果たすWZ−8超音速無人偵察機の搭載も可能です。H−6N爆撃機に吊り下げて搭載されたWZ−8は発進後滑空して情報収集を行います。中国の対米軍事戦略”A2/AD:接近阻止/領域拒否”に於いて、米空母打撃群等に対する対艦弾道ミサイルの運用に関して、目標の補足・追尾能力から実効性に各方面から疑念が指摘されていましたが、このWZ−8の運用は人工衛星などの情報・監視・偵察(ISR)アセットと共にその実効性を高める要素になりえるとも言えそうです。
 他のH−6N改修箇所としてはコクピット風防前中央に空中給油プローブが追加されました。戦闘行動半径も延伸し6000kmとなりさらなる戦力投射能力の遠距離化がなされています。

胴体下にYJ−21対艦弾道ミサイルを搭載したH−6N
ロシアTu−95爆撃機等との共同飛行をおこなうH−6N
超音速無人偵察機WZ−8を搭載するH−6N

 H−6”轟炸6”爆撃機により人民解放空軍には8個爆撃機師団が編成され、その運用機数、搭載可能兵装個数の増加を果たした事から飽和攻撃も危惧されます。

DataH−6K”轟炸6K”
全幅33.00m
全長34.80m
全高10.36m
主翼面積165.0㎡
空虚重量37,230kg
エンジンソロビエフD−30KP−2(117.7kN) x 2
最大速度567kt
巡航速度424kt
実用上昇限度12,800m
戦闘航続距離1,890nm
最大航続距離3,240nm
兵装搭載量12,000kg

保有数 :中国人民解放軍空軍、海軍併せて 計約200機程(H−K/J/N各型、空中給油母機型H−6U/DU除く)
 

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By chikumade233

中国人民解放軍主要装備他、気の向くままに軍事に関して掲載します。

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