殲撃16/Jianji16/乾隆
殲撃11(J−11)派生の多任務型、能力向上型
中国がロシアとの間にスホーイSu−27SKのライセンス生産契約が結ばれ、瀋陽で”殲撃11(J−11)”として生産されました。この契約に於いて生産が認められたのは単座型だけで複座型のSu−27UBKについては含まれていませんでしたが、購入した複座型Su−27UBK”フランカーB”を元にリバース・エンジニアリングを用いて独自改良タイプを開発しました。この複座型の殲撃11が”殲撃11BS(J−11BS)”と呼ばれるものです。J-11BSは2007年に試作機の製造、2008年に外国に情報が伝わり2009年にその存在も確認されています。中国空軍は2010年5月に装備認定を出しました。J-11が制空任務特化した機体であるのに対して、J-11BSはF-15E”ストライクイーグル”のような対地攻撃可能な戦闘爆撃機と言われました。
この殲撃11BS(J-11BS)をさらに能力向上発展させたのが殲撃16(J-16)です。
特徴、運用能力等
殲撃16は2012年12月26日に機体の存在が明らかにされて、2013年1月15日に公式に公開されました。2009年6月の開発承認も伝えられていて、上記の殲撃11BSも登場時期が被ることから、当該2機種の区分けは必ずしもはっきりしないようです。人民解放空軍はロシアから兵器搭載能力・航続性能・多用途作戦能力に優れたSu−30MKKを購入運用していましたが、殲撃16はそれのさらなる中国独自の開発・発展を狙った上位互換機であり、”中華フランカー最終進化形”と言えそうです。

殲撃16の大きな特徴はレーダーを独自開発のアクティブ電子走査アレイ(AESA)型に置き換え、対空目標だけではなく対地目標・対水上目標に対しても優れた探知能力を発揮することとされます。機体構造にも複合素材使用比率を増やし、レーダー電波吸収塗料の塗布により軽量化とレーダー低視認化を果たしています。エンジンに関しては国産の過扇10A(WS−10A)、過扇10B(WS−10B)が採用されてきていますが、将来的には過扇15ターボファン(アフターバーナー推力180kN級)搭載を見込んでいるようです。
搭載可能な兵装としては、PL-15(アクティブレーダー誘導、射程100km以上)、PL-10(赤外線誘導、射程20km)といった空対空ミサイル、KD−88空対地ミサイル(慣性誘導〜終末アクティブレーダー誘導、射程120km)、YJ-83空対艦ミサイル(終末赤外線画像誘導、射程230km)他になります。
外形上の特徴としては艦首レドームが淡灰色でピトー管が廃止されています。殲撃11では風防中央に置かれていたIRST(赤外線捜索追尾装置)は右寄りにオフセットされています。塗装も全体をグレーで塗装した低視度迷彩のものが認められるようになりました。

電子戦型 殲撃16D
殲撃16のECM(電子戦)ポッドの搭載を可能にした電子戦型が殲撃16Dになります。合計12ヶ所のハードポイントを有して、ECMポッドを搭載のほか、対レーダーミサイル、レーザー誘導爆弾等の精密誘導兵器運用能力を持ち、敵防空網制圧/破壊(SEAD/DEAD)を担うと考えられます。
殲撃16に対して主翼端がECMポッドを有して、機関砲とIRSTが撤去されています。

Data | 殲撃16(推定値) |
全幅 | 14.7m |
全長 | 21.9m |
全高 | 6.36m |
主翼面積 | 62.0㎡ |
空虚重量 | 17,700kg |
最大離陸重量 | 35,000kg |
エンジン | 瀋陽過扇10B (ドライ96kN、A/B 145kN)x2 |
最大速度 | マッハ2.5 |
実用上昇限度 | 20,000m |
最大上昇率 | 14,100m/min |
航続距離 | 2,106nm |
乗員 | 2名 |
保有数 中国人民解放軍空軍:殲撃16(未公表) 中国人民解放軍海軍:殲撃16(24機)
※空軍の保有数不明ですが空軍、海軍併せて280機程配備の模様